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会社設立後の手続きは誰に頼める?税理士・社会保険労務士・司法書士・行政書士の業務範囲を法律の条文で仕分け

  • 確認日 2026年10月6日
  • 約10分
  • 「会社設立後の手続きガイド」編集部
この記事の窓口順(目次)9項目
  1. 会社設立後の手続きを「頼める相手」は、手続きの種類で法律が決めている
  2. 税理士:税務署と自治体の税の届出は、税理士の業務範囲
  3. 社会保険労務士:年金事務所・労基署・ハローワークの届出
  4. 司法書士:最初の決算までに登記が必要になったとき
  5. 行政書士:官公署に出す書類を作れるが、税と社会保険は別の法律が優先
  6. 会社設立後の主な届出と、頼める士業の対応表
  7. 資格のない人・業者に頼まないために確かめること
  8. 業務範囲についてよくある疑問
  9. まとめ:窓口で分ければ、頼む相手は迷わない
この記事を読んでほしい方

会社設立後の届出を全部自分でやるのは大変そうだと感じ、誰かに頼むことを考え始めた方に向けた記事です。「税理士に頼めば社会保険の届出もやってもらえるのか」「行政書士と司法書士は何が違うのか」といった、頼む相手の線引きで迷っている方を想定しています。

この記事では、どの手続きがどの士業の業務範囲なのかを、法律の条文と業界団体の公式な案内だけをもとに整理します。事務所の比較や料金の話はしません。頼む相手の選び方そのものは、同じカテゴリーのもう1本で扱っています。

会社設立後の手続きを「頼める相手」は、手続きの種類で法律が決めている

窓口が違えば、頼める士業も違う

会社設立後の手続きを人に任せたいと思ったとき、最初に知っておきたいのは「誰にでも頼めるわけではない」ということです。他人の求めに応じて書類を作ったり、代わりに提出したりする仕事は、手続きの種類ごとに、それを業として行える資格が法律で決められています。

大まかに言うと、税務署や都道府県税事務所・市区町村の税の手続きは税理士、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークの社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士、法務局の登記は司法書士です。この記事でいう社会保険は健康保険と厚生年金保険、労働保険は労災保険と雇用保険のことです。

もう一つの前提は、士業の業務範囲の決まりが、「他人の求めに応じ」「他人の依頼を受けて」行う業務を対象にしているという点です。会社が自社の届出を自分で書いて出すことを妨げるものではありません。会社設立後の届出を社長が自分で書いて出すのは、まったく問題ありません。税務署の届出は自分で出し、社会保険の届出だけを頼むといった組み合わせ方もできます。大切なのは、頼む部分について、相手がその手続きを業として行える資格を持っているかどうかです。

会社設立後の手続きと4つの士業
図:会社設立後の手続きと4つの士業

出典・参考:手続検索|e-Gov電子申請(デジタル庁)

税理士:税務署と自治体の税の届出は、税理士の業務範囲

税務代理・税務書類の作成・税務相談

会社設立後の手続きのうち、最も数が多いのが税の届出です。税理士法第2条は、税理士の業務として、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つを挙げています。税務書類の作成とは、税務官公署に対する申告や申請に関する申告書・申請書・届出書などを作成することです。会社設立後に税務署へ出す法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、いずれもここに入ります。

対象の「租税」からは印紙税・登録免許税・関税などが除かれていますが、法人住民税や法人事業税のような地方税は除かれていません。都道府県税事務所や市区町村に出す法人設立の届出も、税理士に頼める範囲だと読めます。

税理士法第2条第2項は、税理士業務に付随して、財務書類の作成や会計帳簿の記帳の代行などを行えるとも定めています。会社設立後に帳簿をつけ始める段階から相談できるのはこのためです。ただし同項には、ほかの法律で制限されている事務は除くという但し書きがあり、ここでも社会保険・労働保険の書類は別扱いになります。

届出の5点セット(提出先・期限・様式・添付書類・提出方法)

書類 1 提出先 2 期限(起算日) 3 様式の正式名称 4 添付書類 5 提出方法
法人設立届出書 納税地の所轄税務署 設立の日以後2か月以内(設立の日は原則として登記申請日) 法人設立届出書
(2026年10月6日確認)
定款等の写し e-Tax、または書面を持参・送付
税理士法第52条は、税理士または税理士法人でない者は税理士業務を行ってはならないと定めています。日本税理士会連合会は、税理士業務は「有償・無償を問わず」税理士以外が行うことはできないと案内しています。無料だからといって、資格のない人に税の届出書を作ってもらうことはできません。

法人設立届出書の様式には、関与税理士の欄と税理士署名の欄があります。税理士に作成を頼んだ場合は、税理士の側でここを記入します。e-Taxの利用開始の届出も、関与税理士に代理送信してもらう方法があると国税庁のe-Taxのページに書かれています。

出典・参考:税理士法|e-Gov 法令検索(デジタル庁(e-Gov))

社会保険労務士:年金事務所・労基署・ハローワークの届出

書類の作成、提出の代行、事務代理

社会保険労務士法第2条は、労働社会保険諸法令に基づく申請書・届出書などの作成(第1号)、その提出に関する手続きを代わって行うこと(第1号の2)、申請や届出についての事務代理(第1号の3)などを、社会保険労務士の業務として定めています。

会社設立後の手続きでいえば、年金事務所に出す健康保険・厚生年金保険の新規適用届や被保険者資格取得届、労働基準監督署に出す労働保険の保険関係成立届と概算保険料申告書、ハローワークに出す雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届が、これにあたります。

届出の5点セット(提出先・期限・様式・添付書類・提出方法)

書類 1 提出先 2 期限(起算日) 3 様式の正式名称 4 添付書類 5 提出方法
労働保険 保険関係成立届(従業員を雇った場合) 所轄の労働基準監督署(一元適用事業の場合) 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 労働保険 保険関係成立届(様式第1号)
(2026年10月6日確認)
厚生労働省のページに記載なし。確認書類は労働基準監督署に確認 窓口へ提出、またはe-Gov電子申請

同法第27条は、社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者が、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までの事務を業として行うことを禁じています。社会保険・労働保険の書類作成や提出代行を、報酬を払って税理士や行政書士に頼むことは、この規定との関係で注意が必要です。他の法律に別段の定めがある場合などの例外もあるため、自社のケースは依頼先に業務範囲を確認してください。

社会保険・労働保険の届出は、従業員を雇った日や役員報酬を払い始めた日から期限が数え始まり、5日や10日と短いものが並びます。会社設立後に人を雇う予定があるなら、雇用の日が決まった段階で社会保険労務士に相談しておくと、期限に追われずに済みます。

出典・参考:社会保険労務士法|e-Gov 法令検索(デジタル庁(e-Gov))

司法書士:最初の決算までに登記が必要になったとき

法務局の登記は司法書士

司法書士法第3条は、司法書士の業務として、登記または供託に関する手続きの代理や、法務局に提出する書類の作成などを挙げています。設立登記そのものはこのサイトの範囲外ですが、会社設立後から最初の決算までの間にも、登記が必要になる場面はあります。

  • 本店を別の場所に移したとき
  • 役員を追加した・交代したとき
  • 商号や事業の目的を変えたとき

こうした変更の登記は法務局への手続きなので、人に頼むなら司法書士の業務範囲です。一方で、登記のあとに税務署へ出す異動の届出は税理士、年金事務所への変更の届出は社会保険労務士と、同じ出来事でも窓口ごとに頼む相手が分かれる点に注意してください。

本店の移転なら、法務局の登記、税務署と自治体への異動の届出、年金事務所や労働基準監督署・ハローワークへの変更の届出と、一つの出来事から複数の手続きが生まれます。誰がどこまでを受け持つのかを最初に決めておくと、届出の漏れを防げます。

会社設立後の手続きで法務局に行く用事の多くは、登記事項証明書や印鑑証明書の取得です。証明書の請求は会社自身が行う手続きで、オンラインでの請求もできます。通数の数え方は登記事項証明書・印鑑証明書は何通必要かで整理しています。

出典・参考:司法書士法|e-Gov 法令検索(デジタル庁(e-Gov))

行政書士:官公署に出す書類を作れるが、税と社会保険は別の法律が優先

許認可などの書類は行政書士

行政書士法第1条の3は、行政書士の業務として、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類やその他権利義務・事実証明に関する書類を作成することを定めています。事業によっては、会社設立後に営業の許可や届出が必要になることがあり、その書類作成は行政書士の業務範囲です。

ただし、同じ条の第2項は、その業務を行うことが他の法律で制限されているものについては、行政書士は業務を行えないとしています。税務書類は税理士法、社会保険・労働保険の書類は社会保険労務士法の規定があるため、「官公署に出す書類だから行政書士に全部頼める」とはなりません。

行政書士が会社設立後に関わるのは、主に事業を始めるための許可や届出の場面です。会社設立後の手続きのうち、どの許認可が必要かは事業の内容によって大きく変わります。自社の事業に許認可が必要かどうかは、所管の官公署か行政書士に確認してください。このサイトでは、許認可そのものの説明には立ち入りません。

士業ごとの資格の違いは、SoVaの「会社設立を代行する資格がある士業」でも比べられています。

出典・参考:行政書士法|e-Gov 法令検索(デジタル庁(e-Gov))

会社設立後の主な届出と、頼める士業の対応表

届出ごとに、頼める相手は一つに決まる

ここまでの条文をもとに、会社設立後から最初の決算までに出す主な届出を、頼める士業で仕分けると次のようになります。どれも会社自身が出すこともできる手続きです。

会社設立後の主な届出と業務範囲
図:会社設立後の主な届出と業務範囲

表を見ると、従業員がいない会社では労働保険・雇用保険の届出が対象外になるため、社会保険労務士の範囲に入るのは社会保険の届出に限られることが分かります。従業員を雇う会社は、税理士と社会保険労務士の2者が関わるのが基本の形です。

会社設立後の届出の期限は、窓口ごとに起算日が違います。頼む相手を決めたら、各届出の期限を期限とスケジュールの一覧で確かめ、いつまでに資料を渡せばよいかを依頼先とすり合わせてください。

代行を頼んだときの費用の目安は、このサイトでは扱っていません。気になる方は、会計事務所SoVaの「会社設立後に代行できる手続きと依頼相場」を参照してください。

出典・参考:税理士に相談する – 日本税理士会連合会(日本税理士会連合会)

資格のない人・業者に頼まないために確かめること

登録は公式の検索で確かめられる

業務範囲が法律で決まっている以上、頼む相手が本当にその資格を持っているかは大事な確認点です。日本税理士会連合会は、税理士名簿に登録がないのに税務書類の作成などを行う者は「ニセ税理士」として税理士法第52条違反になると注意を呼びかけています。

税理士
税理士は必ず事務所の所在地を管轄する税理士会に所属し、日本税理士会連合会の名簿に登録されています。同連合会の「税理士情報検索サイト」で、氏名や事務所所在地から登録を確認できます。
社会保険労務士
全国社会保険労務士会連合会のページから各都道府県の社会保険労務士会を探せ、会員リストが案内されています。
紹介サイト
日本税理士会連合会は、インターネット上の税理士紹介サイトは同連合会とは一切関係がないと明記しています。

会社設立後の手続きは、会社の情報や従業員の個人情報を預ける仕事でもあります。頼む前に、相手の資格と登録を公式の検索で一度確かめる手間を惜しまないでください。税理士は税理士証票を携行しバッジを着けている、と日本税理士会連合会は案内しています。面談の際に、資格を示すものを見せてもらうのも一つの方法です。

出典・参考:税理士情報検索サイト – トップ(日本税理士会連合会)

業務範囲についてよくある疑問

線引きで迷いやすいところ

Q. 税理士に頼めば、年金事務所の届出もまとめて任せられますか。

A. 年金事務所に出す社会保険の書類の作成と提出の代行は、社会保険労務士法第2条に定められた社会保険労務士の業務で、同法第27条により、社会保険労務士以外が報酬を得て業として行うことは原則として禁じられています。窓口が一つに見えるサービスでも、社会保険の書類を実際に誰が作るのかを確認してください。

Q. ひとり社長で従業員はいません。社会保険労務士に頼む届出はありますか。

A. 労働保険と雇用保険の届出は従業員を雇わない限り対象になりません。一方、健康保険・厚生年金保険の新規適用届は、日本年金機構の案内で事業主のみの法人事業所も対象とされています。この届出を人に頼むなら社会保険労務士の範囲です。社長1人の会社の届出の全体はひとり社長・従業員なしの会社で整理しています。

Q. 税理士に頼むと、税務署の届出は全部税理士の名前で出るのですか。

A. 税理士に作成だけを頼む方法と、税務代理として提出まで頼む方法があり、どこまで任せるかは契約で決めます。日本税理士会連合会は、委嘱の範囲と報酬額について契約書を結ぶことを勧めています。

Q. 司法書士に登記を頼んだら、税務署の異動の届出もしてもらえますか。

A. 税務署への届出は税務書類なので税理士の業務範囲です。登記と届出で頼む相手が分かれる点は、会社設立後に本店を移す会社がつまずきやすいところです。

迷ったときは、「その書類を出す窓口はどこか」を考えると答えに近づきます。窓口が税の役所なら税理士、保険の役所なら社会保険労務士、法務局なら司法書士です。

出典・参考:社労士に相談する | 全国社会保険労務士会連合会(全国社会保険労務士会連合会)

まとめ:窓口で分ければ、頼む相手は迷わない

税は税理士、保険は社労士、登記は司法書士

会社設立後の手続きを誰に頼めるかは、窓口で分けると整理できます。

  • 税務署・都道府県税事務所・市区町村の税の届出:税理士(有償・無償を問わず税理士以外は不可)
  • 年金事務所・労働基準監督署・ハローワークの届出:社会保険労務士
  • 法務局の登記:司法書士
  • 許認可など官公署に出すその他の書類:行政書士(ほかの法律で制限されたものを除く)
  • 会社が自分の手続きを自分で行うのは自由

ここで確認した条文は、2026年10月6日時点でe-Gov法令検索に掲載されていたものです。法律は改正されることがあり、個別のケースには例外もありえます。依頼の前に、相手に「この手続きはあなたの業務範囲か」と確認するのが確実です。

出典・参考:各都道府県の社労士会を探す | 社労士に相談する | 全国社会保険労務士会連合会(全国社会保険労務士会連合会)

最後に、これを読んでいるあなたへ

「全部まとめて誰かに」と思うほど、会社設立後の手続きは数が多く見えます。けれど窓口ごとに分けてみると、頼む相手はせいぜい2〜3種類に収まり、自分で出せそうなものも見えてきます。

まずは、自社が出す届出を窓口で仕分けてみてください。そのうえで、税は税理士、保険は社会保険労務士と、資格と登録を確かめた相手に相談すれば、安心して本業に時間を使えるはずです。業務範囲を知っておくことは、頼む相手を見きわめるための、いちばん確かな物差しにもなります。

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