労働保険の成立届は10日、概算保険料申告書は50日|労働基準監督署に出す2つの書類と期限の数え方
この記事の窓口順(目次)8項目
会社設立後に初めてアルバイトや正社員を雇い、「労働基準監督署に何かを出さなければいけないらしい」と気づいた方に向けた記事です。いつまでに、どの書類を、どこへ出すのかを、雇い入れの日付から逆算して確かめたい方を想定しています。
この記事では、厚生労働省「労働保険の成立手続」と兵庫労働局の案内(どちらも2026年10月6日確認)をもとに、労働基準監督署に出す2つの書類の期限と準備を順に整理します。建設業や農林漁業のように手続きが分かれる業種の違いは、同じカテゴリーの別記事で扱います。
労働保険は、労働者を1人でも雇った時点で手続きが始まる

この記事でいう労働保険は、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。健康保険・厚生年金保険(社会保険)とは窓口も書類も別で、労働保険の入口は労働基準監督署になります。
厚生労働省のよくある質問では、農林水産業の一部を除き、原則として1名以上の労働者を使用する事業はすべて適用事業になると説明されています。適用事業になった日、つまり会社設立後に初めて労働者を雇った日に、事業主の意思にかかわらず法律上当然に保険関係が成立します。保険関係成立届は、その成立を国に知らせる届出です。
裏を返せば、社長や役員だけで労働者を雇っていない会社は、この手続きの対象になりません。設立した日ではなく「最初の労働者を雇った日」が起点になる点が、税務署の届出との大きな違いです。ひとり社長の会社で何が不要になるかはひとり社長・従業員なしの会社の手続きにまとめています。
成立の手続きを怠っていた場合は、行政庁の職権で成立手続と保険料の認定決定が行われ、さかのぼって保険料と追徴金が徴収されることがあると厚生労働省は案内しています。故意または重大な過失で成立届を出していない期間に労災事故が起きると、給付に要した費用の全部または一部を事業主から徴収する仕組みもあります。会社設立後に人を雇ったら、早めに片づけておきたい手続きです。
出典・参考:労働保険とはどのような保険ですか。また、労働保険に入るにはどうしたらよいのですか|厚生労働省(厚生労働省)
期限の起点は「設立の日」ではなく「保険関係が成立した日」

会社設立後の届出の多くは「設立の日」から期限を数えます。設立の日は原則として法務局が登記申請を受け付けた日で、2026年2月2日からは休日を設立の日に指定できる特例もあります。けれども労働保険の2つの書類は、設立の日とは関係なく、保険関係が成立した日、一般的な会社では最初の労働者を雇った日から数えます。
厚生労働省の案内では、保険関係成立届は「保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内」、概算保険料申告書は「保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内」です。成立した日の当日は数えず、翌日を1日目とします。
兵庫労働局のページには「保険関係が成立した日から10日以内」「50日以内」と書かれていますが、労働保険徴収法の条文も成立した日の当日を数えない書き方なので、意味は同じです。会社設立後の手続きを記録するときは、「雇い入れ日」「1日目」「期限日」の3つを並べてメモしておくと、窓口で聞かれたときにも迷いません。
雇い入れの日は、雇用契約で定めた勤務開始の日が目安になります。内定を出した日や、雇用契約書に署名した日と混同しやすいので、会社設立後に最初の雇用契約を結ぶ段階で「何日から働いてもらうか」を書面ではっきりさせておくと、期限の起点もぶれません。

会社設立後に重なるほかの期限とあわせて段取りを組みたいときは、期限とスケジュールの一覧で、税務署・年金事務所・ハローワークの期限と並べて見ると重なりが分かります。
出典・参考:厚生労働省:労働保険の成立手続(厚生労働省)
保険関係成立届の5点セット

まず先に出す保険関係成立届から見ていきます。多くの業種は「一元適用事業」と呼ばれ、労災保険と雇用保険の手続きを一本にまとめて労働基準監督署で行います。
届出の5点セット(提出先・期限・様式・添付書類・提出方法)
| 書類 | 1 提出先 | 2 期限(起算日) | 3 様式の正式名称 | 4 添付書類 | 5 提出方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保険関係成立届 | 所轄の労働基準監督署(一元適用事業の場合) | 保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内 | 労働保険 保険関係成立届(様式第1号) (2026年10月6日確認) |
厚生労働省・労働局のページに一律の定めの記載なし。確認書類は所轄の労働基準監督署に事前に確認 | 窓口持参、e-Gov電子申請(郵送の可否は所轄に確認) |
添付書類については、厚生労働省や兵庫労働局の案内ページに一律の記載がありません。登記事項証明書や事業所の所在地を確かめる書類を求められることがあるため、出向く前に所轄の労働基準監督署へ電話で確認しておくと確実です。
成立届が受理されると、労働保険番号が付きます。このあとハローワークで雇用保険の手続きをするときに、労働基準監督署の受理印がある成立届の事業主控えを求められるので、控えは必ず受け取って保管してください。会社設立後の労働保険の手続きのなかで、この控えはいわば次の窓口への引換券の役割を持ちます。
記入する内容は、会社の名称・所在地・事業の種類、保険関係が成立した日、雇用する労働者の数、賃金総額の見込みなどです。登記事項証明書の記載と食い違いがないよう、会社の名称や所在地は登記どおりに書き写してください。事業の種類は保険料率の区分にも関わるため、迷ったら空欄にせず窓口で相談しながら書くのが確実です。
出典・参考:労働者を雇用したとき(労働保険)ー兵庫労働局(兵庫労働局)
概算保険料申告書の5点セット:申告と同時に納付もする

2つ目の書類は、その年度の労働保険料を見込みで申告し、納める書類です。正式な様式名は「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」で、概算保険料申告書はその通称です。成立届を出したあと、または同時に出します。
届出の5点セット(提出先・期限・様式・添付書類・提出方法)
| 書類 | 1 提出先 | 2 期限(起算日) | 3 様式の正式名称 | 4 添付書類 | 5 提出方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 概算保険料申告書 | 所轄の労働基準監督署、所轄の都道府県労働局、日本銀行(代理店・歳入代理店として全国の銀行・信用金庫の本店または支店、郵便局でも可)のいずれか | 保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内(申告と納付) | 労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書(様式第6号) (2026年10月6日確認) |
申告書に付いている納付書に、納付する全額を添える | 窓口持参、e-Gov電子申請(納付は書面・電子のいずれも可) |
兵庫労働局の案内によると、概算保険料は、保険関係が成立した日からその保険年度の末日(3月31日)までに、すべての労働者に支払う賃金総額の見込額に保険料率を掛けて計算します。年度の途中で人を雇った会社は、雇った日から3月31日までの分を見込むことになります。
金額が40万円以上の場合は、9月30日までに保険関係が成立した事業場に限り、延納(分割納付)ができると案内されています。保険料率や計算の細かい手順は業種ごとに違うため、申告書を書く前に所轄の労働局の案内で確認してください。賃金総額の見込みは、雇用契約で決めた月給や時給と、3月31日までの月数から大まかに出せます。会社設立後に追加で人を雇う予定があるなら、その分も見込みに入れておくかどうかを、申告の前に労働局へ相談しておくと安心です。年度末には実際の賃金で精算する手続き(年度更新)がありますが、これは最初の決算までの手続きの範囲を超えるので、この記事では触れるだけにとどめます。
出典・参考:労働者を雇用したとき(労働保険)ー兵庫労働局(兵庫労働局)
10日と50日を横に並べると、何を先にすべきかが見える

労働保険の書類は2つだけですが、会社設立後に初めて人を雇うと、ハローワークや年金事務所の届出も同じ時期に重なります。雇い入れの日を起点に、期限の長さを並べてみます。

成立届と雇用保険適用事業所設置届はどちらも10日ですが、順番が決まっています。厚生労働省は、成立届の手続きを行った後に、雇用保険の設置届と資格取得届の手続きを行うと案内しています。概算保険料申告書は50日と余裕がありますが、成立届と同時に出してしまえば、労働基準監督署に行くのは1回で済みます。
ハローワーク側の手続きの順番と添付書類は雇用保険とハローワークの手続きで、雇い入れ全体の流れは初めて従業員を雇うときの届出で確認できます。
出典・参考:厚生労働省:労働保険の成立手続(厚生労働省)
電子申請で出す場合の準備

労働保険の成立届と概算保険料申告書は、e-Gov電子申請でも出せます。e-Govのよくある質問では、労働保険関係の手続きの電子申請(一部の手続きを除く)について、法人代表者のアカウントであるGビズIDプライムを使えば、電子証明書を添付せずに申請できると説明されています。
また、「保険関係成立届」「名称、所在地等変更届」「代理人選任・解任届」の3つの手続きは、雇用保険や社会保険の手続きとまとめて出すグループ申請が使えるとされています。会社設立後に人を雇い、労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所の届出が同時に発生する場面では、窓口を回る手間を減らせる方法です。
電子申請を選ぶ利点は、窓口の受付時間を気にせずに出せることと、送信した内容が記録として残ることです。反対に、初めての利用ではGビズIDの取得や操作に慣れる時間が要ります。成立届の期限は10日と短いので、会社設立後に初めて人を雇う時期とGビズIDの準備が重なりそうなら、早めにアカウントを作っておくか、最初の1回は窓口で出すと決めておくと慌てません。
電子申請で事業主の代わりに申請できるのは、法律で認められた人に限られます。e-Govの案内では、代理人選任届を出している代理人、社会保険労務士、委託している労働保険事務組合が挙げられています。書類の作成や提出を外部に頼むなら、社会保険労務士に依頼するのが基本です。
概算保険料の納付は、電子申請の画面では電子納付しか選べないものの、納付そのものは書面でも電子でも可能だとe-Govは案内しています。納め方に迷ったら、所轄の都道府県労働局に確認してください。
出典・参考:労働保険適用徴収手続 | e-Gov電子申請(デジタル庁)
労働基準監督署に出かける前の確認リスト

- 会社設立後、まだ給料を払っていなくても成立届は出しますか。
- 保険関係は労働者を雇った日に成立するので、給料の支払いがまだでも、雇い入れの日から10日以内に成立届を出します。概算保険料申告書は、これから払う賃金の見込みで書く書類です。
- アルバイトを1人だけ雇う場合も対象ですか。
- 厚生労働省は、原則として1名以上の労働者を使用する事業はすべて適用事業になると説明しています。雇用保険に入るかどうかは働き方で判定が分かれますが、労働者を雇った以上、成立届の手続き自体は必要になると考えて準備してください。判定に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認しましょう。
- 社長の家族を手伝いとして雇う場合はどうなりますか。
- 同居の親族の扱いは一般の労働者と異なる場合があるため、一律には言えません。会社設立後に家族を雇う予定があるなら、雇い入れの前に労働基準監督署へ相談しておくと、手続きの要否を早めに判断できます。
会社設立後に初めて労働基準監督署へ行く人のために、出かける前に確かめておきたいことを並べます。添付書類は監督署によって案内が違うことがあるため、最後は電話での確認をおすすめします。

労働基準監督署は、労働保険の手続きだけでなく、労働条件や安全衛生の相談も扱う役所です。窓口では労働保険の担当に案内されるので、「会社設立後に初めて労働者を雇ったので、保険関係成立届を出したい」と伝えればスムーズです。
成立届の控えを受け取ったら、その足でハローワークに向かうと、雇用保険の設置届と資格取得届まで同じ日に済ませられます。業種によって労災保険と雇用保険の手続きが分かれる場合は、窓口の回り方が変わるので注意してください。
出典・参考:厚生労働省:労働保険の成立手続(厚生労働省)
まとめ:雇った日を書き留め、10日と50日を手帳に入れる

会社設立後の届出のなかで、労働保険は「設立したから出す」ものではなく「人を雇ったから出す」ものです。設立直後に雇用の予定がなければ、この手続きは保留にしておいて構いません。
労働保険の手続きは、会社設立後に初めて労働者を雇った日から始まります。保険関係成立届は翌日から起算して10日以内、概算保険料申告書は50日以内で、申告と同時に保険料も納めます。成立届の控えはハローワークの手続きで使うため、必ず受け取って保管してください。
- 労働保険=労災保険+雇用保険。労働者を1人でも雇えば対象
- 起点は設立の日ではなく、保険関係が成立した日(雇い入れの日)
- 成立届は労働基準監督署へ。様式は「労働保険 保険関係成立届(様式第1号)」
- 概算保険料申告書の正式名称は「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」
会社設立後に採用を続ける予定があるなら、2人目以降は成立届も概算保険料申告書も出し直す必要はなく、雇用保険の資格取得届など人ごとの手続きだけが続きます。最初の1回で労働保険番号と控えをきちんと残しておくことが、その後の手続きを軽くします。
保険料率や様式は年度によって改定されることがあります。書類を書く前に、所轄の労働局や労働基準監督署の最新の案内を確認してから手続きに進んでください。
出典・参考:労働保険の保険料の徴収等に関する法律|e-Gov 法令検索(デジタル庁(e-Gov法令検索))
最後に、これを読んでいるあなたへ
初めての雇用は、採用が決まった喜びと同時に、慣れない届出が一気に押し寄せる時期でもあります。まずは雇い入れの日付をカレンダーに書き、そこから10日と50日の印をつけるところから始めてみてください。
会社設立後の労働保険の手続きは、順番さえ守れば窓口を何度も往復せずに済みます。迷ったときは所轄の労働基準監督署に電話で確認し、書類の作成や提出を任せたい場合は社会保険労務士に相談すると安心です。
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